心の底から「待ったかいあった」と宣言できる4年半ぶりのオリジナル・アルバムが完成。間違いなく、前野健太の最高傑作であり、“昔からあったような、新しい音楽”。ここにある詩とサウンドが、これまでの歌謡曲ではない、新時代の歌を掴もうとしている。
新世代のシンガーソングライターとして登場し、音楽誌では10年代のベスト・アルバムに選ばれる名作を残す。「ライブテープ」などドキュメンタリー映画主演やフジロック、サマーソニックなど大型ロックフェスにも出演するなど音楽家としての歩みを進めてきたフォーク・シンガー前野健太。 自身の作品以外にも、KAAT「わかったさんのクッキー」(台本・演出:岡田利規)の劇中歌を作曲。NHK番組「ジドリ」の劇判、NHKドラマ「あったまるユートピア」主題歌“いのちのきらめき”を担当。などキャリア10年で生み出してきた詩とメロディが合わさった「うた」が様々な反響を生み、それが反射する形で近年は文筆家、映画・舞台役者へと転がりつづけるように活躍の場所は広がっていった。文筆家としては4年目に突入しようとしている文芸誌「すばる」での連載に始まり、昨年は初のエッセイ集「百年後」を出版。役者としても、昨年韓国・プチョン国際映画祭で特別賞を受賞した映画「変態だ」で初の劇映画主演(みうらじゅん原作、安斎肇監督)。そして東京芸術劇場にて岩井秀人、森山未來と共に出演し、NHK Eテレでドキュメントも放送された演劇「なむはむだはむ」にて舞台役者デビューなど気づくと音楽以外の分野で光を浴びることも多くなっていた。そんな未知とも言える新たな世界に感化されながらも「うた」はたえまなくこぼれ続けた。
膨れ上がる、新たなる歌心の追求。そして、日々は過ぎていった。ようやくうたの原石が集まり始めたころ、すばらしいパートナーたちに巡り合う。ceroの荒内佑が初めてのプロデュースを承諾。これまでも多くの時間を共にし、前野の音楽を理解する盟友石橋英子。まだ20代半ばながらリーダーであったバンド、森は生きている解散後も幅広く活躍する岡田拓郎。そして「恋するフォーチュンクッキー」などを手掛けJ-POP一線で活躍する編曲家である武藤星児。弾き語り以外はこの4人が前野の楽曲をプロデュース・アレンジ。“ブランニューケンタ”をキーワードに、歌謡曲の時代をなぞるのではなく、これからの歌謡を一緒に作り出したい。そんな想いを胸にアルバム制作がはじまりました。その結果として伊賀航、小西遼、ジム・オルーク、Amazonsなど20名強の参加ミュージシャンたちと心を通わせた音楽が1枚のアルバムとして遂に完成。楽曲が持つポテンシャルが最高なアレンジで録音され、前野本人は主演男優のようにサウンドに身を任せ、すばらしい歌声を聴かせる。その色気をまとった声は将来、歌手・前野健太のデビューと称されるポイントになるかもしれません。 「うた」だけは1度も裏切ることなく、歩んできた正直すぎるシンガーソングライター。だからこそたどり着いた、100年後に生きる人にも届く強い普遍性。日本を彩った偉大な音楽家や歌い手の気配をたぐり寄せながら、仲間と一緒に“新しい歌”を掴もうとするマエケンの再デビュー・アルバム。10年前、母に借金をして勝手に自主デビューした男が、今度は勝手にメジャー・デビューぐらいの気概を示し戻ってきた。
ジャズもロックも歌謡曲も全て混ぜ込んだ十三曲十三色の万華鏡のような1枚。あなたにとってどの曲がかけがえのない歌になるでしょうか?マエケンはきっとこう言うでしょう。「どう感じるかはあなたの自由です」と。そしてこれが日本人にしか語れない歌心。何時聴いても1年中満開の桜をお楽しみください。大人の方はお酒と一緒にお花見気分でどうぞ。