父親の命日は10月3日、もう20年経ったことになる。
多摩川の土手でギターを弾いていた。
なんで普段しないようなことをしていたのだろう。
夕日は完璧だった。
下北へ移動して友人とコーヒーを飲んだ。
初めて入る店だった。
なんで彼とお茶をしたのだろう。
二人でお茶をしたことなんてなかったはずだ。
店を出ると母親から留守電が入っていた。
もう時すでに遅し、という感じだったが、
ギターを背負ったまま原付飛ばして実家へ急いだ。
その時のことはよく覚えている。
「別に死ななくたっていい曲作れるのによお!」
胸の内ではこんなことを叫んでいた。
でも実際はどうだろう。
親父が死んでから何かが始まったのは確かで、
風の感触も、風景の表情も、変わった。
父親はライブを一回も見ずに、死んだ。
そんなことはどうだっていいけど、
二人で旅をしてみたかったな。
車窓に映る俺と親父、
入れ替わる歌。
なんの弁当が好きかも知らないよ。
まったく短い人生さ。
走るか。
2020.10.4